研究概要 |
平成18年度は大気泡による乱流摩擦抵抗低減現象と,微小気泡による乱流摩擦抵抗低減現象の2つのカテゴリーに分類して実験装置を改造し,詳細な計測を実施した.前者については,壁面せん断応力センサーの時間分解能を高め,10mm〜100mmサイズの気膜状気泡の局所壁面せん断応力に注目し,個々の気泡による抵抗の増減の時系列データを取得した.このデータの統計解析により,気泡サイズの増大とともに抵抗が減少し,局所応力がゼロとなる臨界気泡直径が存在することを検出した.この結果より,従来までの時間分解能では不明であった抵抗低減機構の新たな理解を深めることができた.この成果は国際誌Int.J.Multiphase Flowに投稿し掲載された.後者については,理論展開を実施したうえで実験データから抵抗低減機構の全く新しい解明を実現した.すなわち微小気泡を含む乱流の運動量保存方程式からレイノルズ分解によって導出される二相流の乱流せん断応力を導き,その応力を実測値によって分析した.この結果,レイノルズ応力,縦相関応力,三重相関応力の3者の成分の大きさと符号が世界で初めて明らかとなった.具体的には微小気泡の混入により,レイノルズ応力は低減(抵抗低減に寄与),縦相関応力は負値として生成(抵抗低減に寄与),また,三重相関応力は正値として生成(抵抗の増加に寄与)することが判明した.この成果は英文誌Experiments in Fluidsに投稿し掲載された.以上のほか,UVP(超音波ドップラー流速分布計測法)を新たに導入し,気泡を含む乱流チャネルの液相流速分布の変化を計測した.この結果,抵抗低減が実現する壁面にむけて速度ピーク位置が移動することが判った.この成果は日本機械学会発行の国際誌Journal of Fluids Science and Technologyに投稿され掲載された.
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