研究概要 |
近い将来,マイクロデバイスに代わってナノデバイスが普及してくるのは明らかであるが,ナノスケール特有の物理現象を解明しないことには,ナノテクノロジーの進展は望めない.通常,電解質に接する固体壁面は負に帯電するため,電解質中の陽イオンが界面近傍に引き寄せられ,厚さ数十〜百ナノメートルのイオン層,即ち,電気二重層を形成する.本研究では,電気二重層の影響が対向壁にまで及ぶナノチャネルを対象として,電気二重層の時空間構造の実験的解明を行い,電気二重層構造のみを制御することによる革新的なマイクロ・ナノ空間流動制御技術の確立を行う.本年度は,電気二重層厚さ,そして壁面ゼータ電位二次元分布時系列計測を可能とする,ナノ・レーザ誘起蛍光(Nanoscale laser induced fluorescence=ナノLIF)法の開発を行い,壁面ゼータ電位二次元分布の計測に世界で初めて成功した.レーザ光導入用プリズム及びレーザ光放出用可動プリズムを用いて,カバーガラス内で全反射を繰り返し,広視野にてエバネッセント光を照射するシステムの開発を行った.作動流体にイオン化する蛍光色素を混入し,カリウムイオン濃度を調節することにより,イオン濃度が異なる混合場を形成した.電気二重層厚さ,あるいは壁面ゼータ電位は,電気二重層付近に存在する蛍光色素からの蛍光強度と強い相関関係にあることから,CCDカメラにて撮像した蛍光強度分布から,二次元分布を求めた.流体の対流および拡散によるイオン挙動が,電気二重層形成に直接的に関わっていることが明らかとなった.
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