研究概要 |
近年,高機能マイクロマシン実現や情報機器デバイス実装のためのマイクロマニピュレーション技術への需要が高まっている.一般に,マイクロメートルスケールの微小物体は他の物体への凝着が起こりやすく,その凝着現象を制御するためには,微小物体に電界をかけることによって発生する静電力を制御することが有効であると認識されるようになってきている.そこで本研究では,「静電マイクロマニピュレーションにおいて,電子線照射による電子注入等の方法により対象物を予め帯電させ,プローブ印加電圧を制御することによって,誘電体を自由にマニピュレーションする手法を確立する」ことを目的とする. 今年度は,走査型電子顕微鏡やその真空チャンバーに対応したマイクロマニピュレータに改造を行うことで誘電体静電マイクロマニピュレーションシステムを構築した.クロスローラガイド+超音波モータからなる粗動系と静電容量式のフィードバック系をもった3軸ピエゾアクチュエータステージからなる微動系を有し,マニピュレータ全体が真空チャンバー中にインストール可能となっている.これにより,電子線で対象物を観察しながらプローブにて機械的マニピュレーションが可能であると同時に外部端子導入によってプローブ電位を制御することによって静電力によるマニピュレーションが可能となった. また,電子注入による誘電体の帯電量が予測可能である場合に,プローブの印加電圧をどのように制御しれば,対象物をプローブから離脱させ基板に衝撃無く付着させる,あるいはその逆の動作が可能になるかを理論的に検討し,提案手法の実現可能性を示した.
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