本研究は、工場内や災害現場など、人間の潜入しにくい狭隘空間を移動探査できるロボットの開発を目的としている。その実現のためには、推進駆動用アクチュエータおよび伝達駆動系の小型構造化・高出力化が不可欠である。そこで、研究代表者らが提案してきた偏平チューブを用いた流体アクチュエータを用いて駆動系の省スペース化を図り、目的のロボット実現手段を検討していくことにした。 まず、アクチュエータ単体の駆動推進力を検討するため、自励振動を生成する円形偏平チューブ:(Flat Ring Tube、以後FRTと呼ぶ)の駆動特性を調べた。その結果、FRTは外部環境と接触する箇所に応じて振動幅が異なり、駆動力を生成するのに適した接触部の存在が明らかとなった。 次に、円筒形状またはマット形状の移動探査機の推進を目指し、FRTを複数個用いてそれらの周部に配置したところ、上記最適部で駆動した場合でも全体として十分な推進力を得ることはできなかった。これは、FRTを複数個配置したことにより、各々のFRTへの流量が減少し、推進力の低下につながったものと考えられる。 その解決策として、対抗した複数の偏平チューブの手繰り出し現象を用い、外部環境に対して全く摺動せずに探査装置を搬送する、全く新しい移動方式を考案した。これは、円筒状柔軟ホース内部からホース表皮が手繰り出されるように推進する動作を基本とするものである。試作したホースユニットは、ホース表皮の外壁軸方向に位相差180度を有して2本の偏平チューブを配置した構造を基本としている。偏平チューブ端部から1気圧程度の空圧で加圧すると、探査用カメラを狭隆空間で推進移動させることが確認できた。 今後は、さらに移動環境の形状に応じて、方向操作を行いながら推進する方式を検討してゆく予定である。
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