研究概要 |
本年度は,プロセス用熱プラズマ源として開発した(i)PMITPの過渡特性を測定し,プラズマ内の励起原子の過渡変動特性を明らかにすること,(ii)このPMITPを金属表面改質プロセスへ応用し、その適用効果を見出すことであった。 1.Ar-N2 PMITPの発生維持範囲の測定 PMITPはコイル電流振幅をパルスAM変調するため,制御できるパラメータとして,コイル電流高値HCL,低値LCL,コイル電流高値維持時間On-time,低値維持時間Off-timeの四つを有し,これらに対してPMITPを安定維持できる範囲が存在する。これを調べるために,時間平均電力を15kWに固定し,LCL/HCLを下げた場合の安定維持限界範囲を明らかにした。 2.PMITPによるTi表面改質プロセスへの応用 Ar-N_2 PMITP下流に実際にTiサンプル(15mmΦ-5mmt)を設置し,表面の高速チッカを検討した。特にLCL/HCL条件を変更して,変調条件と,チッカ表面状態との関係を検討した。照射時間は3分に固定した。表面分析には,XRDおよびディジタルマイクロスコープDMSなどを用いた。その結果,変調条件により,改質表面状態に有意な差を見出し,変調することによる効果が得られた。 3.Ar, N線スペクトル放射強度の変化 実際のAr-N2 PMITPが変調電流に追随性を探るべく,プラズマからのArおよびN線スペクトル放射強度の時間変化を観測した。ここでは,Ar751nm, N746nmの線スペクトルを対象とした。その結果,下流チャンバ付近においては,コイル電流をパルス変調させることにより,Nスペクトル放射強度の時間平均値を大きくしうることを見出した。これは,コイル電流のパルス変調により下流に流入する励起N原子数を多くできると考えられ,高速チッカに有効であると考えられる。 4.Ar励起温度の変化と平均温度の制御 波長703mmおよび714nmにおけるArスペクトル放射強度を同時測定し,二線強度比法でAr励起温度時間変化を求めた。その結果,Ar励起温度は,コイル電流のパルス変調に伴い,大きく変動することが確認できた。熱プラズマにおいても数msオーダの変動により大きく温度が変化することが確認できた。
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