本年度は、1)絶縁膜高品質化による特性改善、2)ロードプル測定による動作電力評価について実施した。 1)自然酸化Al2O3絶縁膜は薄いAl(3nm)を大気中で酸化して作製した。このゲート絶縁膜を利用して作製した高周波ダイヤモンドFETのゲートリーク電流は、従来利用されてきたCaF2やSiO2と比較して4桁以上低く、ゲートの面積で規格化したゲートリーク電流が1e-6A/mm2と良好な値が得られている。高周波特性では、LG=0.35um、WG=50umのデバイスでfT:30GHzが得られた。このfTはダイヤモンドFETでは世界最高の値である。自然酸化Al2O3と高移動度基板を用いたデバイスでは、同じ寸法の従来デバイスと比較してfTが2倍程度改善している。キャリア速度が飽和していると考えると、fTとLGのトレンドはキャリア速度6e6cm/sに対応している。このキャリア速度は従来の約2倍で、ダイヤモンドの飽和キャリア速度(1e7cm/s)の約60%に達している。2)FETの大信号時の電力密度と効率を評価するため、ダイヤモンドMISFETでは世界初となるロードプル法による動作出力測定を行った。1GHzにおける入出力電力特性を評価したところ、LG=0.3um、WG=100umのデバイスで飽和電力密度:2.14W/mm、ゲイン:10dB、電力負荷効率:42%が得られた。バイアスはVGS=-1.5V、VDS=-20Vである。この電力密度はこれまでNTTなどから報告されているダイヤモンドMESFETの結果とほぼ同等であるが、MESFETと比べて低いドレイン電圧で高い出力電力が得られているため、効率も10%程度高くなっている。また、この電力密度はこれまで報告されているGaAs FETとLDMOSFETの最高値よりも高い値であった。
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