研究概要 |
本年度はデバイス特性の改善に向けて,以下の項目について研究を実施した。 1)キャリア伝導機構の評価散乱要因やキャリア濃度制御の観点から,まず基板の面方位,特に(001)および(110)面が水素終端ダイヤモンドホール蓄積層の伝導性に及ぼす影響について調査を行った。単結晶(001),(110)基板上に同一条件でホモエピタキシャル成長した正孔蓄積層のホール効果測定による評価では,移動度がほぼ同等であるのに対して,シートキャリア密度に大きな違いが見られた。(001)基板ではシートキャリア密度が1.5×1013cm-2程度であるのに対して,(110)基板では2.5×1013cm-2程度であった。これは,(110)面のC-H結合密度が(001)面と比べ約1.4倍高いことに起因していると考えられ,表面キャリアの起源をC-H結合電荷によるものとするモデルを裏付けている。 2)キャリア伝導機構解明による高利得化(110)面方位単結晶ダイヤモンドを基板に用いたMISFETでは450mA/mmが,(110)高配向多結晶ダイヤモンドを基板に用いたMISFETでは790mA/mmの高電流密度動作を実証し,特に多結晶ダイヤモンドでは45GHzの遮断周波数が得られた。fmaxはプロセス技術に依存する寄生素子を排除することにより100GHzを超える値が得られる事が解析的に示唆された。 3)材料信頼性評価ダイヤモンド電子デバイスを実用化するに当たり,問題となる表面グラファイト化について評価を行ったところ。非パッシベーション素子では真空中の400℃アニールにおいて600時間程度で表面グラファイト化が発生することがわかり,パッシベーション層の開発が必要であることがわかった。
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