研究概要 |
本研究は、国際インフラストラクチャ整備におけるコンフリクト管理手法の構築を目的としている.本年度は,国家間の利害の衝突を含んだ社会基盤整備の諸問題に対し,第三国または仲裁・調停機関が用いることのできる問題構造化手法を新しい集団支援システムとして開発を行った.インフラストラクチャ整備をめぐる利害衝突が顕著である事例を対象とし,既往の研究で開発された戦略地図や議論ツリーなどのツールを用い,当該コンフリクトの構造が視覚的に把握できるようなモデルを構築するととも,当モデルを媒体として関係者が論点整理や議論のシミュレーションを行うことができるような情報システムのプロトタイプの作成を行った.プロトタイプの作成に当たって取り上げた事例は,社会基盤整備をめぐるコンフリクトに地理的文脈が大きく関与し,かつ各関係主体の利害関係が錯綜している,熊本県の川辺川ダム建設事業である.初めに当該事業に関する新聞記事や住民協議会などの議事録の内容を分析し,論点の抽出・議論ツリーの構築を行った.次に地理情報システムを用いてこれらの論点の在り処を地図上に表示し,サーバーを通じて議論参加者・第三者ともに議論内容を閲覧することのできる情報共有システムの作成を行った. 本システムの汎用化を目指し,資源配分における利害調整の事例への適用を行った.事例研究の対象としたのは,スマトラ沖地震による津波の被害を受けたタイ南部6州における救援物資・生活支援物資の配分状況である.資料収集・インタビューによる調査の結果,供給物資を被災者のニーズが必ずしも一致していない現状があることがわかった.以上より,適切な資源配分を行うためには被災者のニーズを空間的に把握することが必要であり,本研究で開発した情報システムが資源配分の利害調整に適用可能であることが示された.
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