最適な水の安全管理手法を提案するため、病原微生物の発生動向の違いを生み出す原因を解明する必要がある。そこで、河川水および下水関連の水試料を対象として、陰電荷膜吸着・酸洗浄・アルカリ誘出法を用いてウイルスを濃縮し、それぞれの試料におけるウイルスの存在状況を調べた。また、同時に糞便汚染指標として大腸菌を測定した。 中国の北京、ベトナムのハノイにおいても同様の試験を行い、ヒト腸管系ウイルスの発生動向はウイルスの属レベルでは大きな違いとしては観察されないことを明らかにした。一方で、インドネシアのジャカルタではA型肝炎ウイルスが高濃度で検出されるなどの地域差が水試料中のウイルス濃度として反映されることも示してきている。 日本におけるアデノウイルスの型別の試験を行う一環として、腸管系疾患を引き起こすアデノウイルス40型および41型に特異的なプライマーと、すべてのアデノウイルスに特異的なプライマーを用いて水環境中の存在状況を調べた結果、ほとんどのアデノウイルスが40/41型であることが示された。このことから、水環境中に存在するウイルスは腸管系疾患を引き起こす種類が卓越していると考えられた。 また、ノロウイルスとともに培養が難しい腸管系ウイルスであるサポウイルスは、これまでに環境水における発生動向が知られていなかったが、下水試料に冬季に多く含まれることが分かった。このことは疫学的に知られている傾向と一致するものであった。
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