平成18年度は、ローマおよびフィレンツェに現存する古代遺構の再生・転用事例を調査・分析し、再生・転用の手法と共に、周辺地区の形成過程において果たした機能と役割を考察した。 1.調査対象 オクタウィアエ回廊跡の住居3件、ポンペイウス劇場跡の住居2件(共にローマ)、フィレンツェ中心部の都市組織 2.対象事例の実地調査および主要事例の現況実測調査と分析用資料の作成 再生・転用の様態が特徴的なローマの転用事例に関しては現況実測調査を行い、平面・立面・断面等の図的資料を作成し、VRイメージを記録すると共に、現地で収集した各種資料をデータベース化した。 3.対象事例の周辺地区の調査 各都市の古代遺構の転用が見られる都市組織を以下の3点から調査した。「聖域の形成」ではオクタウィアエ回廊のジュノー神殿の住居化を調査した。「都市境界の形成」ではフィレンツェにおける円形闘技場遺構とボルゴの形成との関係性を史料より明確化した。「周辺への形態投影」では航空写真および考古学調査地図からローマおよびフィレンツェの調査対象周辺地区に見られる平面の特質を調査した。 4.文献・史料の収集 対象事例に関する文献、都市図、不動産登記台帳等の各種史料を、現地の専門店および国立図書館・古文書館や考古学遺跡監督局、環境財建築文化財監督局の研究所にて収集した。 5.VR技術による建築空間の記録と分析 撮影画像を専用ソフトで再構成し、仮想空間たるVRイメージを事例毎に制作した。遺構の初源的要素(壁・柱・ヴォールト等)を立体画像から抽出した。
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