研究概要 |
エネルギー枯渇問題と,化石燃料消費による地球温暖化問題の観点から,廃熱や太陽熱を利用しエネルギー利用効率を高める技術の開発が急務である.熱を電気に変換できる熱電材料はこれらの諸問題を解決する機能性材料として注目を集めている.現在実用化されている熱電材料による熱電発電は変換効率が悪く,現状では大規模な熱電発電が行われる迄に至っていない.熱電材料の特性を向上により大規模熱電発電を実現することは,21世紀の材料研究者に課せられた最も重要な課題の一つである. 申請者は,近年,様々な金属材料の異常な電子物性(電気伝導率,熱伝導率,熱電能,電子比熱係数,ホール係数)を電子構造と結晶構造を解析することにより解明する基礎研究を行ってきた.これらの基礎研究により得られた知見から,熱電材料に対して今までに提案されていない全く新しい材料設計指針を構築するに至った.本研究では,申請者が提案する熱電材料設計指針により高性能熱電材料を開発することを目的としている. 平成18年度に行った研究において,格子定数が大きく複雑な構造を有する材料では,熱を主に運ぶ音響的フォノンの数が著しく低下し,かつ,ゾーン境界付近のフォノンが容易に励起されることでUmklapp散乱が顕著になり,熱伝導度を低減させていることを明らかにしたさらに,A1基準結晶の熱伝導度は,同じ局所構造を有するA1基近似結晶の熱伝導度よりも小さく.準結晶に特有の準周期性が熱伝導度を著しく低下させる役割を果たしていることを明らかにした.また,A1基近似結晶の結晶構造に不規則生が著しく導入されると,フェルミ準位近傍の擬ギャップが消失し,大きな熱電能が得られないことも明らかにした.
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