カーボンナノチューブ(CNT)は、電気伝導性、熱伝導性、機械的強度に優れており、電子放出材料、リチウム電池の負極材料、ナノコンポジットのみならず、ナノデバイスへの応用研究が進展している。我々がこれまでに開発してきた通電加熱法は、導電性を有する材料の通電加熱によって、ナノメートルサイズの結晶を成長させるものであり、種々の材料の結晶成長に有効な手法である。これまでに様々なCNTの合成方法が研究されているが、現在市販されているものは、いずれもg当たり数千円〜数万円の価格であり、CNTを実用材料とするためには低コスト化が渇望されている。 通電加熱法を用いれば簡便な手法によりCNT、カーボンナノワイヤ、カーボンナノオニオン等の各種ナノカーボンの合成が可能であると考えられる。そこで、本研究では、各種ナノカーボンの新規大量合成技術の開発を目的として、通電加熱法によるナノカーボン材料の生成条件の調査および生成機構の解明を行った。 本年度は、炭化珪素線材を通電加熱する際の酸素分圧(P_<02>=0.5〜1000Pa)と全圧(P_<Tota1>=100〜1000Pa)を制御することにより、ナノカーボン材料の生成の制御を試みた。評価したすべての条件において、炭化珪素の重量減少を伴うアクティブ酸化が起こった。透過電子顕微鏡を用いた観察の結果、CNT、ナノワイヤ、ナノ粒子等の各種ナノカーボンが優先的に生成する条件の存在が明らかとなった。また、炭化珪素だけではなく、様々な材料を通電加熱することによりナノ材料を合成し、本手法がナノ材料合成の有効な作製方法であることを確認した。
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