本研究課題では、欠損骨に対し、骨密度のみならず骨質指標としての配向性を正常化するための外場利用の基礎的手法を確立するとともに、配向性解析を中心とした材料工学的アプローチ、特に結晶学的特徴に注目した解析法の完成を目指し、骨組織の最も重要な機能である力学機能との相関を解明することを目的とした。 本年度は、初年度得られた「骨再生への磁場、応力効果」に関する知見を元に、臨床を視野に入れた外場利用技術を検討するとともに、骨の材質パラメータと構造パラメータの分離を試みた。その結果、応力場下で再生された骨の三点曲げ試験による特性パラメータは、構造パラメータと材質パラメータとに明確に分離され、再生初期では構造パラメータの優先回復が、後期では材質パラメータにより力学機能が支配されることが判明した。さらに、材料工学的手法を用いて、アパタイト配向性、密度を解析することで材質パラメータを精査したところ、配向性が骨再生時の最大応力やヤング率を支配することが判明した。さらに、曲げ時の吸収エネルギーは、配向性に強く依存し、コラーゲン/アパタイト配列による亀裂伝播抵抗が靭性向上に有効に働くことが判明した。こうした結果は、通常の骨再生時には材質パラメータの早期回復は不可能であって、構造パラメータによって、暫定的に修復する傾向があることを意味している。したがって、外場印加による人工的な材質パラメータのコントロールは、骨再生機構を根底から代える技術であり、新しい骨再生手法として重要であるものと結論された。
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