研究概要 |
メルトスピンは,産業的に重要な急速凝固プロセスの一つである.融液/銅板界面で進行する凝固過程に関する詳細な研究は,材料特性を改善する鍵といえる.しかしながら,直接観察の困難さ故,銅板の回転速度と凝固組織の関係等から間接的に凝固過程を推測し,最適な条件を経験的に求めているのが現状である.そこで今回,銅板の代わりに熱伝導率の良いSiウエハーをチャンバー内に設置した真空モーターにより定常速度で横回転させ,その上に融液を噴射させる擬メルトスピンシステムを構築した.本研究では,下部に設置したIRカメラでメルトスピンにおける融液/チル板界面での凝固挙動をその場観察することを試みた. 約10Kの過加熱Si融液を1mmφのノズル穴から4000rpmで回転する基板上に噴射したときの様子を上部及び下部から撮影した.基板上で湯だまりが形成され,そこからリボン状に凝固している様子を観察した.湯だまりでの基板/融液界面をIRカメラによって5kHzで始めて観察した.融液が回転方向と逆向きに少し広がり,ノズル直下部分から凝固が開始し,固体部分が徐々に大きくなっていた.融液が一定速度で供給されるため,固液界面位置は一定であり,定常状態に達することがわかった 以上のことから,シリコンウエハーを冷却基板とした赤外映像システムにより,湯だまり下部におけるリボン形成過程は熱移動過程により律速されていることがわかった.今回,典型的な金属と同じPr数を有するSiをモデル材料として実験を行った.これらの結果は,核生成速度が遅い金属ガラス材料を除いて,金属,合金系に拡張されることができ,今後のメルトスピンプロセスの物理現象を解明する上で,有益な情報を与えるものといえる.
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