フェノールに代表される有機酸は比較的水中溶解度が大きく、深刻な水汚染の原因になりやすい。すなわち、一度溶解すると分離しづらい。さらに生体毒性もあるため生分解も遅い。このため、水に溶解した有機酸は人工的な手段(何らかの工程)で除去される必要がある。申請者らはこれら有機酸と特異的に相互作用する種をハイドロゲルやガラス(アモルファス固体媒体)などのハンドリングが容易な媒体に固定化することにより、取扱いが容易な廃水処理材の開発を行っている。ここでは相互作用種の安定な固定化と、拡散操作の最適化による本方法のフィージビリティー改善が研究の目的であった。 平成19年度は本若手研究(A)の量終年度にあたった。そこで申請者らはハイドロゲルもしくはその類似媒体の拡散操作における迅速化と機械的強度の大幅な改善を行い、これらを実際に使用できる系へレベルアップすることを企図した。まず第一に被固定化種の更なる安定化が必要である。島津製作所製フーリエ変換赤外分光光度計IR PRESTAGE-21を用いて被固定化種の長期間の安定化の実験的検討を行い、これを実証した。更に、ハイドロゲルは膨潤環境で使用されるにせよ、乾燥した環境で用いられるにせよ、実用上充分な磯械的強度を有することが大切である。この点を検証しながら研究を進めるために、島津製作所製微小硬度計HMV1Tを用いて強度の検討を行った。実用に供せられる十分な強度を持つハイドロゲル/ガラス媒体を作製し、本手法が廃水からの溶解有機酸種の除去に有効であることを示した。これまでに論文等での外部発表に到っている。また続報も引き続き化学工学関係の学会で発表する予定である。
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