研究概要 |
本年度は以下の4点について研究を進めた。 1)Cd含有量を減らし、結晶と同じ構造を持つ粒子よりも安定性を向上させ、CdSeナノ粒子の医療用効果を高めるために、(M_1X_1/M_2X_2)_n (M_1=Zn,X_1=S,Se,M_2=Cd,Pb,X_2=S,Se)のシェル-コア構造の量子ドットについて第一原理計算を行った。初期構造として我々のグループにより理論的に予言され、実験グループによって観察されたフラーレンに似た構造を持つ(CdSe)_<34>を選んだ。安定性を検討した結果、(ZnS)_<28>/(PbS)_4,以外は(M_2X_2)_6よりも(M_2X_2)_4の方が安定であることを明らかにした。 2)さらに大きなサイズのクラスター形状の探索を行い、(MX)_4n_2(nは層の数)という安定な化学組成や大きさに関する「デザインルール」を見いだした。これはオクタヘドロン対称性のケージをどのように作製すればいいのかを示唆している。またこれらのケージは化学結合を切ることなくTd対称性の構造に変化させることができる。 3)光線力学的治療にフタロシアニンおよびフタロシアニン基分子がよく利用されている。より効率のよい治療薬の開発のためにレーザーなど外部光の波長とこれらの分子吸収帯を一致させる努力がなされている。計算化学の分野ではより正確な吸収スペクトルの予測手法の確立が求められている。本研究ではフタロシアニン、ポルフィリンおよびそれらの誘導体の計算を進めている 4)熱を与えて癌細胞を死滅させる方法(温熱療法)は新しい癌治療として期待されている。磁場中の熱の発生について第一原理計算により求める手法の開発を開始している。
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