D-T核融合実用炉における液体ブランケット概念を成立させるためには、液体金属を強磁場下で流動させる際に発生するMHD圧力損失の低減、配管に対する腐食低球、及び配管からのトリチウム透過漏洩速度の低減が重要な検討課題であり、これらを解決する有力な手段としてセラミックスコーティングを配管構造材料表面に施す事が考えられている。本研究では、コーティング候補素材を種々の手法にて薄膜化し、その諸物性の測定を行うと共に、絶縁性、耐腐食性、トリチウム不透過性といった特性を明らかにして機能発現メカニズムを明らかにする。平成17年度は、PVD法の一種であるプラズマスパッタ法を用いて酸化エルビウムコーティングを試作し、さまざまなパラメータ下で作成したコーティングについて結晶性、不純物濃度、絶縁性等を測定と共に、この絶縁性測定、熱サイクル試験、水素透過試験を行った。その結果、コーティング自体は高温液体リチウム中での化学安定性を示したものの、高温におけるコーディング中応力緩和による基盤との密着性低下に伴う一部の剥離が発生する事により、液体リチウムを電極として用いた絶縁性試験及び水素透過試験において十分な向上は観測されなかった。一方、PVD法の一種であるアークソースプラズマ蒸着法によってさまざまなパラメータ下で酸化エルビウムコーティングを試作すると共に、蒸着反応試験法による酸化カルシウムコーティングの試作を行った。これらについては、液体リチウム中での高温長時間の共存性を示すと共にし、酸化カルシウムコーティングについては液体リチウム中での高絶縁性を達成した。これらの成果については日本原子力学会及び、米国で開催された核融合炉材料国際会議にて公表した。
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