研究概要 |
大腸菌recN遺伝子は、SOS誘導を受ける遺伝子群の一つで、DNA二重鎖切断修復に関与している。RecNタンパク質は、SMC(structural maintenance of chromosomes)スーパーファミリーに特徴的な構造を保持していることから染色体の動態制御に関与していると考えらているが、RecNがどのような因子と相互作用し、また、制御されているのかに関しては明らかになっていない。本研究では、RecNタンパク質と相互作用する因子を同定し、それらの機能を詳細に解析することで、DNA二重鎖切断修復における染色体動態制御の実態を明らかにすることを目標としている。 昨年度の研究から、RecNは、半減期が非常に早いタンパク質であり、その分解がエネルギー(ATP)依存性プロテアーゼClpXPによって特異的に引き起こされていることを見いだしていたが、さらに、RecNの分解が起こらない条件下では、RecNは凝集体として細胞質に蓄積し、慢性的なDNA損傷環境下においては、これらの凝集体が細胞の生存率の低下を引き起こすことを明らかにした(Nagashima, K., et al. J.Biol.Chem. 2006)。この結果は、バクテリアにおいて慢性的DNA損傷ストレスに対する適応応答にタンパク質分解による品質管理制御が重要な役割を果たしていることを示しており、引き続きこの凝集体による細胞増殖阻害機構について解析を行っている。本年度は、これらの研究に加えてDNA修復に直接的に関わる因子との相互作用について解析を行った結果、組換え反応において中心的な役割を果たすRecAとの物理的相互作用を、精製タンパク質間及びin vivoにおける免疫沈降実験によって明らかにすることが出来た。現在は、このRecA-RecN相互作用のDNA相同組換え反応において果たす役割について解析中である。ここから得られる結果は、染色体動態制御とDNA相同組換えの連携機構に重要な知見を示すことができると考えている。
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