研究概要 |
(1)Caスパイキングの受容因子であるCCaMKの機能獲得型CCaMK-CAの共生変異体への形質転換実験から、根粒菌・菌根菌の感染受容を司る共通シグナル伝達経路に属する宿主遺伝子群のうち、Caスパイキングの上流に位置づけられているSYMRK、CASTOR、POLLUX及びNup85遺伝子が、根粒菌及び菌根菌の感染過程に直接的に関与していないことを明らかにした。一方、根粒共生特異的経路に位置するNFR1は、根粒菌の感染過程に直接的に関与することが示され、NSP2は、CCaMKの下流に位置し、根粒器官形成過程を直接的に制御する事が示された。 (2)イネTos17挿入変異体OsCCaMKは、花粉そのものが全く形成されない優性不稔表現型を示すことを明らかにした。この雄性不稔および菌根共生不全表現型は、OsCCaMKゲノム配列形質転換により相補されたことから、OsCCaMK遺伝子は、花粉形成および菌根菌共生の2つの過程に必須の遺伝子であることが示された。 (3)菌根共生から根粒共生への進化の過程で、CASTOR/POLLUXおよびCCaMK遺伝子が機能的に進化しているかを検証するため、イネオルソログによるミヤコグサ変異体の相補実験を行った。OsCASTOR,OsCCaMKはミヤコグサ当該変異体の根粒共生表現型を完全に相補したが、OsPOLLUXでは、相補は不完全であった。これらの遺伝子では、イネ・ミヤコグサ間でのドメイン構造の大きな変化などはないことから、CASTOR/POLLUX及びCCaMKは、Caシグナル誘導に必要な因子として保存・維持され、根粒共生系においても、共生菌の「感染受容」過程を支える因子として機能していることが強く示唆された。
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