研究概要 |
本研究課題では、高等植物の葉緑体中でフェレドキシン(Fd)に依存する種々の酵素蛋白質を研究対象としているが、本年度は亜硫酸還元酵素(SiR)の構造研究を中心に研究を進めた。植物のSiRは、光合成電子伝達系のFdから電子を受け取りSO_3^<2->やNO_2-を6電子還元する酵素で、特に硫黄代謝において重要な役割を担っている。シロヘムと[4Fe-4S]を酸化還元中心にもち、分子量65,000の単量体構造である。よく似た酵素が細菌類にも存在し結晶構造も判っているが、細菌型のSiRはオリゴマー構造で、Fdに依存しないという明確な違いがある。今回、我々が構造研究に用いたのはトウモロコシ由来のSiRで、大腸菌に大量発現させた組換え体を用いて結晶構造解析を行った。構造解析の結果、シロヘム、[4Fe・4S]の配置は細菌型SiRに似ており、歪んだヘム面にディスタル側の塩基性側鎖(R193)で安定化されたPO_4^<3->がほぼ同じ様に結合していた。しかし非常に興味深いことに、トウモロコシSiRでは、翻訳後修飾としてヘム近傍のY106とC188の側鎖が共有結合でつながっていたのである。類縁酵素である亜硝酸還元酵素では対応する部位がF、Gとなっており植物型SiRに特徴的な構造であると思われる。野生型と前後して、R193A、Y106F/C188Gの各変異体の結晶構造解析と活性測定を行ったところ、PO_4^<3->の結合、YC間の共有結合、SO_3^<2->還元活性、NO_2-還元活性はそれぞれ、R193A(-/+/-/+)、Y106F/C188G(+/-/-/+)となった。植物型SiRでは、基質SO_3^<2->の認識にR193の長い側鎖が必要で、SO_3^<2->の還元反応にはY-C間の共有結合が必須であることが判明した。現在、特徴的な水分子の配置の役割も含めて詳細な反応機構の考察を行っている。
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