研究概要 |
細胞質ペプチド:N-グリカナーゼは小胞体における品質管理機構に関連する分子である。すなわち、機能的な構造が取れない糖タンパク質、あるいは正しいサブユニット構造をとれない糖タンパク質を分解、除去する小胞体関連分解(ERAD)とよばれる過程に関わっており、異常タンパク質が26Sプロテアソームで分解される際に、糖鎖をタンパク質から脱離させ、その後のタンパク質分解の効率を促進することが示唆されている。我々は既に細胞質のPNGase結合タンパク質として、Rad23タンパク質を同定した(Suzuki, T.et al.(2001)J.Biol.Chem.276,21601-21607.)。今年度は既に我々によって開発されていたPNGaseのin vivoにおける活性アッセイ系を用いて、PNGase-Rad23複合体の生理機能の解明を試みた。結果、我々が見出した同複合体のin vivoの基質となるモデルタンパク質の効率よい分解に同複合体が関わっていることが明らかとなった。興味深いことに、この基質はRad23が関与する別のERADに関わる別の複合体、Rad23-Ufd2複合体は必要としなかった。我々は免疫共沈降実験、およびゲルろ過の解析によりこれら2つの複合体は生体内で別々の複合体として存在し、機能することを明らかにした。これらの結果から、ERADの基質特異的な分解経路の存在が示され、Rad23が関与する分解系でもPNGase-Rad23複合体依存的なもUfd2-Rad23依存的なものの少なくとも2種類に大別されることが明らかとなった。これらの結果は複数の国際学会などで発表し、論文として発表した(Kim, I.et al.(2006)J.Cell Biol.172、211-219.)。
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