研究概要 |
細胞質ペプチド:N-グリカナーゼは小胞体における品質管理機構に関連する分子である。すなわち、機能的な構造をとれない糖タンパク質、あるいは正しいサブユニット構造をとれない糖タンパク質を分解、除去する小胞体関連分解(ERAD)と呼ばれる過程に関わっており、異常タンパク質が26Sプロテアソームで分解される際に、糖質をタンパク質から脱離させ、その後のタンパク質分解の効率を促進することが示唆されている。昨年度までに我々はPNGase-Rad23複合体がERADの基質の一部を分解することを見出した(Kim, I. et al. (2006)J.Cell Biol. 172,211-219)。本年度は我々が出芽酵母に始めて見出したPNGase依存的に分解する基質である植物毒素タンパク質リシンの無毒化変異体を用いたERADのアッセイ法を確立した(Tanabe, K., et al.(2006) Methods Enzymol. 415,46-55)。また、PNGase分子の糖鎖プローブへの結合を解析し、酵素分子の基質認識に関わるドメインを同定した(Suzuki, T., et al. (2006) J.Biol.Chem. 281,22152-22160)。現在リシンタンパク質の分解の有無を細胞の増殖でアッセイできるような遺伝学的システムを構築しており、予備的な実験結果からこの新しいシステムが十分機能することを確認している。この新しいシステムはPNGase依存的なERADの分解系の解析に威力を発揮することが期待される。
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