通常の核酸合成酵素は核酸の鋳型を用いて、それに相補的な配列を合成する。しかしながら本申請の題材である鋳型非依存性RNA合成酵素は核酸性の鋳型を用いることなく核酸を合成することができる。この鋳型非依存性RNA合成酵素にはポリAポリメラーゼおよびCCA付加酵素(CC付加酵素、A付加酵素)を含み、ポリAポリメラーゼの場合にはポリA配列、CCA付加酵素の場合にはCCA配列を合成する。如何にしてこれらの酵素が核酸性の鋳型を用いず核酸を合成するかについての分子基盤、および、この特性の分子進化基盤を明らかにするのが本申請の目的である。申請者は、古細菌由来のCCA付加酵素(A.flugidus)の単体の構造を決定しているが、今回、このCCA付加酵素とRNAとの二者複合体、およびCCA付加酵素とRNAさらにヌクレオチドの三者複合体の結晶を作成に成功した。具体的にはRNAとしては3'末端の様式が異なるもの(CCA、CA、Aが欠けたもの、またCCAのもの)をもちいて、いずれのRNAとの二者複合体の結晶を得た。さちにCAが欠けたRNAとCTPとの三者複合体、Aが欠けたRNAとATPとの三者複合体の結晶をも得た。これらの結晶を播磨のスプリング8あるいはつくばの高エネルギー研での回折実験をおこなったところ、いずれの場合も2.6-2.9Aの回折像を取得することができた。いずれの結晶もSpace GroupはP43212(a=58、b=58、c=420-440(結晶によって異なる)、・=・=・=90)であった。また非対称単位にひとつの複合体が含まれることが予測された。分子置換法によって構造決定に成功し、一分子のCCA付加酵素は一分子のRNAと結合していることが明らかになった。現在、それぞれの構造の精密化をおこなっている途中である。今後、全ての構造を決定し、鋳型非依存性RNA合成酵素がどのように核酸を合成するのかいった分子機構の問題点を明らかにしたいと考えている。
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