CCA付加酵素は、核酸性の鋳型を用いることなくCCA配列を付加することができる唯一の鋳型非依存的RNA合成酵素である。申請者は、クラスI古細菌のCCA付加酵素とRNA、ヌクレオチドのCCA付加反応の開始、伸長、終結反応を表した連続した複数の構造がX線結晶構造解析によって決定し、クラスICCA付加酵素によるRNAへのCCA配列の付加反応における酵素、RNA、そして付加されるヌクレオチドの動的分子基盤の全貌を明らかにした。 その結果、C付加反応においては、CTPによって酵素とRNAの二者複合体の酵素はN末端ドメインが"開いた"構造から"閉じた"構造への変化し、それに伴ってRNAプライマーの3'末端ヌクレオチドがひっくり返り、反応が進行する活性型へ移行し、そしてCTPが付加されることが明らかになった。これはRNAプライマーが酵素へ結合した時点(二者複合体)ではヌクレオチド特異性が決定されておらず、ヌクレオチドによって誘導される酵素、RNAの動的要素によって特異性が決定されていることを示唆する。一方、二つ目のC付加反応後は、酵素は"閉じた"活性型構造に固定化され、ATPが結合すればそのまま反応が進行することが明らかになった。ATP付加反応は、動的なCTP選択反応とは対照的に、RNAプリアマーが結合することによってのみでATPの選択性が決定されていることが明らかになった。さらに、CTPとATPとの識別、特異性の切り替えは、先に述べたクラスIで提唱されているモデルとは異なり、鍵となるアミノ酸残基(Arg224)のコンフォメーションが酵素全体の動的なCTPの取り込みの時と、静的なATPの取り込み反応では異なっていることによって行なわれていることも明らかになった。
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