本研究では、多様な1分子観察・操作・測定技術を組み合わせ、核膜孔複合体を介した物質輸送過程を一分子レベルで解析し、そのメカニズムを解明することを目的とする。 これまでに以下のような成果が得られている。 1)アフリカツメガエル卵抽出液を用いて、ビーズの周りに核膜複合体を含む核膜を再構成する技術を確立した。 2)大腸菌で発現・精製したimportin alphaとimportin beta、および核移行シグナル(NLS)を含むEGFPx3を再構成核膜に加えると、EGFPx3が、シグナル依存的に核内側へ輸送されることを確かめた。 3)NPCを構成するタンパク質にRFPを融合させたものを昆虫細胞で発現させ、上記の再構成系に加えることで、再構成核膜中のNPCを蛍光でラベルすることに成功した。 4)ビーズ上での核膜再構成系を平坦ガラス基板上に応用し、ガラス基板上に核膜を再構成することに成功した。 5)原子間力顕微鏡のカンチレバーを化学修飾し、任意のタンパク質を結合させる技術を確立した。 6)タンパク質を結合させたカンチレバーを用いて、基板上に展開したタンパク質との間に作用する力を、数10pNのオーダーで測定することに成功した。 7)カンチレバーにPEGリンカーを介してグルタチオンを結合させる技術を開発した。これにより、あらゆるGST融合タンパク質をカンチレバーに結合させることが可能となった。 現在、これらの再構成核膜孔複合体と輸送タンパク質との相互作用を、1分子レベルで観察する実験系を確立することに取り組んでいる。
|