研究概要 |
本研究は、T4ファージを対象として、どのようにしてDNAがウィルス頭殻に詰め込まれるのかという基本的な現象を原子レベルで明らかにしようとするものである。本年度の成果は下記の通りである: 1.パッケージングモーター蛋白質群および、その機能ドメインの発現・精製 既に発現系の構築してあるgp17,gp16,gp17^<1-360>(ATPaseドメイン),gp17^<360-577>(DNA切断ドメイン)について、立体構造解析に適した精製法を確立した。申請した蛋白質精製装置AKTA explorer10Sは順調に稼動しており、短時間で上記の蛋白質を高純度に、ほぼ同時に精製するすることが可能となった。 2.生化学的・物理化学的解析 得られた精製試料を温度、pH、塩濃度、ATP,ADP,ATPアナログ等の条件を変化させ超遠心分析機XL-I、ゲルろ過カラムクロマト(全て当研究室内設備)をもちいて分子間相互作用解析を系統的に行うことにより生化学的に活性のある安定な複合体の形成条件の探索を試みているが、現在のところ溶液中でgp16は約20量体、gp17は単量体で存在することが分かった。DNAパッケージング能を持つと期待される、gp17とgp16のヘテロ複合体は検出されていない。 3.結晶化・構造解析 gp17,gp16,gp17^<1-360>(ATPaseドメイン),gp17^<360-577>(DNA切断ドメイン)について、結晶化に適した精製試料を用いて結晶化を試みている。具体的には、市販のグローバルな結晶化条件スクリーニングキットを用いて、蒸気拡散法により結晶化条件の初期検索を行っている。その中でも、gp17については結晶化することに成功した。現在、構造解析に向けて充分な質と大きさを持った結晶を得るための条件を探索中である。
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