研究概要 |
本研究は、T4ファージを対象として、DNAがウィルス頭殻に詰め込まれる現象を原子レベルで明らかにしようとするものである。本年度の成果は下記の通りである: 1.ポータル・ネック蛋白質群の発現・精製 ポータル蛋白質(gp20)、ネック蛋白質(gp13,gp14)について、発現・精製を行った。gp20は、不溶性画分に回収されるため、尿素による変性後精製しリフォールディングを試みた。現在、天然と同じ12量体の存在が確認できたが、そのほかの分子種もあるため結晶化に更なる努力が必要である。gp13,gp14はそれぞれ、単独で精製することに成功し単量体で存在することが分かった。また、系統的な条件検討を行うことによって(gp13)_<10>-(gp14)_5からなる複合体の単離に成功した。 2.生化学的・物理化学的解析 gp16,gp17に関しては昨年度に引き続き、生化学的に活性のある安定な複合体の形成条件の探索を試みているが、現在のところ溶液中でgp16は約20量体、gp17は単量体で存在することが分かった。DNAパッケージング能を持つと期待される、gp17とgp16のヘテロ複合体は検出されていない。現在、基質である末端形状の異なるDNA断片との相互作用を解析中である。 3.結晶化・構造解析 gp17,gp13,について、結晶化に適した精製試料を用いて結晶化を試みている。具体的には、市販のグローバルな結晶化条件スクリーニングキットを用いて、蒸気拡散法により結晶化条件の初期検索を行っている。その中でも、His_6タグを除去したgp17については結晶化することに成功した。現在、構造解析に向けて充分な質と大きさを持った結晶を得るための条件を探索中である。
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