研究課題
糖尿病と難聴を併発する14709変異を持つMIDD(maternally inherited diabetes and deafness)において、変異tRNA^<Glu>のwobble位のτm^5s^2Uが欠損していることを見出している。この変異tRNAは修飾を欠損することで、対応する2つのコドンであるGAA/GAGは問題なく翻訳できるのに対し、隣のアスパラギン酸のコドンであるGACを誤翻訳してしまうという現象が観測された。この現象はミトコンドリア翻訳系の精度を著しく低下させるものであり、呼吸鎖活性の低下の要因になっていると考えられる。さらに、5549変異を有する痴呆及び舞踏病の患者でtRNA^<Trp>のwobble位のτm^5Uが欠損していることを見出した。In vitroのリボソーム結合実験において、この変異tRNAがシステインのコドンを誤認識する結果が得られたことから5549変異によって引き起こされるコドン解読異常がミトコンドリアの機能異常をもたらすと考えられる。また、メバロン酸血症では、メバロン酸キナーゼの変異によってコレステロールやユビキノンの生合成が欠損することで生じる先天性代謝異常症である。ところが、患者の血中コレステロール値は正常であるとの報告があることから、メバロン酸経路の遮断によって生じる複合的な要因によって発症すると考えられる。患者由来の繊維芽細胞からRNAを抽出し、RNA修飾を解析したところ、tRNAの37位に存在するi^6A(N6-isopentenyladenosine)とms^2i^6A(2-methylthio-N6-isopentenyladenosine)の含量が優位に減少していることが判明した。この修飾の生合成には、メバロン酸経路で合成されるイソペンテニルピロリン酸が直接の基質として使用されることが知られていることから、メバロン酸経路の遮断によって生じたRNA修飾欠損であると考えられる。これらの修飾はtRNAのコドン解読能や翻訳フレームの維持に必要であることから、代謝異常から生じたRNA修飾異常が疾患の一要因のなっている可能性を強く示唆するものである。
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