研究概要 |
シアノバクテリアの時計蛋白質KaiA, KaiB, KaiCを適当な濃度比でin vitroで混合することで,24時間周期のKaiCリン酸化の概日リズムを再溝成することができる。しかし,実際の細胞は,細胞分裂・増殖に伴う細胞内外のノイズ外乱のために,in vitroのようなstaticな場ではない。シアノバクテリアでは,増殖条件でのみ,kai遺伝子を含む大多数の遺伝子の転写翻訳リズムが観察されるが,kai遺伝子の転写振動は,コアの蛋白質振動ループの安定化に寄与している可能性が考えられる。この検証には転写翻訳ループ(すなわち時計遺伝子自体の転写リズム)のある条件と無い条件を再構成して,そのリン酸化振動の安定性解析をすればよい。そこで,概日リズムを示さない細胞として大腸菌に対し,kaiAもしくはkaiBCを,trcプロモーターもしくはbadプロモーターに連結した形質転換体を複数ヴァージョン作製し,KaiC蛋白質の量的変動・リン酸化の経時変化を検討した。その結果,さまざまな条件下でリン酸化プロファイルの変動に相違が見られた(Tozakiら,論文印刷中)。ただし,当面の目標は,大腸菌内でリン酸化振動を再構成することであるが,いまだ成功していない。理由としては,Kai蛋白質群の大腸菌内での発現量が,振動可能な範囲を逸脱していること,大腸菌内の細胞環境がシアノバクテリアのそれとは異なる可能性などが考えられる。 さらに,マイクロアレイを用いた概日発現および明暗応答プロファイルの解析を続け,連続明条件下における発現位相が,明暗サイクル下でのそれと多くの場合乖離すること,比較的少数にとどまる暗誘導遺伝子群が,実際に蛋白質レベルでも誘導を受けること,例外的ではあったが,連続明条件下,高振幅で周期的に発現するnon-coding RNAが存在することなどを明らかにした。
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