研究概要 |
本研究では、(1)脊椎動物が首から尾にまで広がる肢形成能力を獲得するに至った経緯を解明し、さらに(2)四肢動物が首から尾にまで広がる肢形成能力を持っているにもかかわらず、前肢領域と後肢領域にのみ四肢を形成させている仕組みを解明することで、脊椎動物が四肢を獲得するために構築してきたボディプランに迫ることを目標として研究を行った。 最初に、体側に広がる対鰭形成能を獲得した過程を明らかにするために、無顎類ヤツメウナギ胚のボディプランを解析した。我々はヤツメウナギ胚から当初計画した全ての肢芽形成に関与する遺伝子群のホモログの単離、および発現解析に成功し(Tiecke, et. al., 2007)、対鰭獲得過程に関するモデルを提唱した(Matsuura, et. al., in press; Onimaru, et. al., under preparation)。 さらに、対鰭が四肢へと進化した過程を明らかにするために、軟骨魚類サメ胚のボディプランの解析を行った。我々はサメ胚より、当初計画した全ての遺伝子の断片をクローニングすることに成功し、発現パターンの解析(Zerina, et. al., 2008)とその発現制御機構について解析し、古代魚が獲得した原始的な鰭を四肢へと変化させていく過程でおきたボディプランの変化を考察した(Sakamoto, et. al., submitted)。 また、四肢形成能力が体側に広がるにもかかわらず2対に分離した鰭を持つ仕組みを解明することを目的として、ニワトリ胚で脇腹特異的発現を示す転写抑制因子の機能解析を行い、脇腹では積極的に肢芽の形成を抑えるシステムが存在することを明らかにした(Kanazawa, et. al., under preparation)。
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