動物の胚発生をシステムレベルでとらえるためには、きわめて多くの情報を四次元的に処理し、可視化する必要がある。前年度までに初期胚の転写因子ネットワークの概要を明らかにしたが、これをさらに精密に分析し、また可視化するために情報学的基盤整備を行った。結果として得られたデータベースをweb上で公開し、ホヤの初期発生を支配する転写因子ネットワークを細胞単位で追跡することが可能になった。今後の実験的解析によるネットワークの精密化にも対応できるように工夫してある。 母性に発現する転写因子が胚性に発現する転写因子を制御するメカニズムをゲノムワイドなレベルで明らかにするための実験的解析として、以下の解析を行った。これらの解析によりホヤ胚発生をシステムのレベルで理解するための実験的基盤が整いつつある。 1 フランスマルセイユ大学のLemaire研究室と共同で、昨年作製した約350のタンパク質発現用コンストラクトを用いて大腸菌でタンパク質を合成した。今後in vitro selection法によって転写因子の結合配列を網羅的に決定する。 2 母性に発現する転写因子を発現プロファイルのデータをもとにして網羅的に選び出し、350個をRNAのin vitro合成用のベクターに組み込み、過剰発現実験の準備を行った。 3 遺伝子ネットワークにおける制御関係が直接であるのか間接であるのかを実験的にハイスループットに確認するための手段としてクロマチン免疫沈降およびDamメチラーゼを利用した方法を検討し、実験技術を確立した。
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