昨年に引き続き、3つのサブテーマに分けて研究を遂行した。(A)カイコ卵における温度センサーの同定と機能解析。(B)休眠ホルモン産生細胞群と脳を巡る神経ネットワーグの解析。(C)休眠誘導関連遺伝子のスクリーニング。 (A)昨年クローニングした温度センサータンパク質(ThermoTRPチャンネル)遺伝子のTRPA1、TRPM、painlessの3種類のカイコのホモログcDNAに加え、新たにTRPA2(Pyrexia)およびTRPA3のクローニングに成功した。いずれのcDNAもキイロショウジョウバエのものと相同性が高く機能ドメインも保存されていた。胚発育期および幼虫・蛹での遺伝子発現を解析し、いずれの遺伝子も様々な発育時期の様々な組織・器官で発現していることを確認した。また、昆虫培養細胞(SF9)系での温度センサーの機能解析を行うため、発現ベクターを構築し、化学発光による検出を行っている。 (B)アポトーシス誘導タンパク質(Reaper)を特定の脳内細胞で発現させるため、様々な遺伝子の各プロモーター領域の下流にreaper cDNAを繋いだコンストラクトをもつ組み換えAcNPVを作製し、休眠性および非休眠性の蛹に注射し、次世代卵の休眠性を観察した。その結果、休眠性の変換が観察されるコンストラクトが見つかった。現在、piggyBAC形質転換カイコを利用して、結果の確認と休眠ホルモン放出制御細胞の同定を試みている。 (C)3種類のイオン透過型GABAレセプターサブユニットとGABAトランスポーターのcDNAをクローニングにした。これらの遺伝子とThermoTRP遺伝子群の発現抑制による休眠誘導への影響を調査するため組換えAcNPVおよび形質転換カイコを作製中である。
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