1.出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeより調製した形質膜画分をドナー膜とし、小胞体画分をアクセプター膜としたin vitroのオルガネラ間ステロール輸送の再構成系を構築して、その機構について解析を行った。形質膜画分から小胞体膜画分へのステロールの輸送には細胞質とATPが必要であることを明らかにした。また酵母変異株より調製した細胞質画分を用いることにより、小胞輸送に依存しないステロール輸送経路があることを示唆した。更に、昨年度に引き続き細菌由来のsterol acyltransferaseを酵母内で発現させ形質膜や液胞に局在させることにより、小胞体から形質膜や液胞へのステロール輸送系の構築も進めた。 2.酵母のoxysterol binding proteinであるOsh1〜7の機能やその違いを明らかにするため、各oxysterol binding proteinを単独で発現する株の作製を行った。現在までにOsh4〜7を単独で発現する株の作製に成功した。 3.ステロールの生理的役割を明らかにするため、エルゴステロール合成を培地め炭素源で制御できる株を用い、細胞内のエルゴステロール合成や含量を変化させた場合の胞子形成効率を調べた。その結果、細胞内のエルゴステロール含量を低下させた場合には胞子形成効率が低下することを明らかにした。この結果から、エルゴステロールが胞子膜形成に必要とされる可能性が示唆された。 4.ステロール代謝と他の脂質の代謝との関連を調べるため、LC-MS/MSを用いたリン脂質ホスファチジルコリンとホスファチジルエタノールアミンのメタボローム解析を更に進め、細胞内にそれらリン脂質のアシル鎖をリモデリングする機構があることを示唆した。
|