本年度は、食品成分代謝産物の特異的モノクローナル抗体作成に加えて、標的蛋白質および標的アミノ酸残基のラベル化を目指した、食品成分の標識化合物の合成を行った。また、生理機能の動的解析を効率的に行うことを目的として、in vitro、in vivoでの血管内皮実験モデルを構築するとともに、食品機能成分代謝物の血管内皮における新規生理作用を検討した。 まず、抗体作成に関して、前年度に引き続き、キャリアタンパク質としてkeyhole limpet hemocyaninを用い、付加体をハプテンとした抗ハプテンモノクローナル抗体の作成に成功し、モノクローナル抗体産生細胞株を樹立した。一方、食品成分の標的蛋白質、標的アミノ酸残基のラベル化を目的として、食品成分のbiotin化誘導体の合成を試み、ペプチド合成に用いられる試薬を応用してこれに成功した。このbiotin化物が、免疫化学及びそれに準ずる手法にて特異的検出が可能であることを確認した。 血管内皮は消化吸収後、食品成分代謝物の影響を受ける組織として重要であり、それらを評価する実験系の構築は生体内での生理機能の動的解析に必須である。そこで、本実験系の構築を短期間且つ効率的に行う目的で、米国Illinois大学シカゴ校、Dr.M.Ushio-Fukaiの研究室に赴き、研究を行った。その結果、ラット及びヒト初代培養細胞を用いた増殖因子誘導性細胞内シグナルのモニタリング手法を新たに取得し、リン酸化シグナルだけでなく、酸化ストレスシグナルの簡易検出法の構築に成功した。また、パパイヤ由来イソチオシアネート(ITC)の機能性に関する研究を行い、ある種のITCが増殖細胞特異的にアポトーシスを誘導することを証明し、p53がその制御に重要であることを世界に先駆けて報告した。
|