研究概要 |
斜面崩壊が毎年多く発生するわが国では,危険な斜面を事前に知る必要がある。しかし、現状の技術では危険な斜面を精度よく予測できていない。危険地判定の精度向上に有力な手法を開発する必要がある。斜面崩壊の前兆現象や現地調査では湧水が多く確認される。危険地判定の精度向上には斜面土層中の水みち経路の特定が有効と考えられる。 まず,山腹斜面で簡便に水みち位置を特定する手法を開発した。すなわち,地下水流音を聞いて水みち位置を特定する方法である。実験・現地調査から本手法は簡便かつ高精度で水みち位置を特定できることを確認した。 崩壊発生位置と水みちの位置関係を知るために,自然斜面・林道法面の崩壊発生地で地下流水音を測定した。崩壊発生位置では地下水流音が大きいことが調査した全ての斜面において確認された。この傾向を確認するため,来年度以降もデータの積み重ねが必要である。また,崩壊の発生していない斜面でも崩壊地と同様の強い地下流水音分布が得られた斜面が複数ある。これらの斜面が豪雨で崩壊するかを今後の調査で明らかにする必要がある。 地下流水音調査は天候の良い日に実施する。しかし,晴天時に大きな地下流水音が検知され場所が,豪雨時にも崩壊の発生するような地下水流が発生するのかは不明である。そこで,崩壊を有する斜面で水文観測を開始した。調査斜面で地下流水音探査を実施し,音圧分布を根拠に斜面の約100箇所に井戸を設けた。 今年度は,台風が通過せず累加雨量150mmのデータが1回しか観測できなかった。複数の豪雨イベントから両者の関係は議論されなければならないが,地下流水音の大きいところでは,豪雨時に地下水流が集中する結果を得ている。来年度の豪雨イベントを期待したい。
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