セルロース系多糖分子の還元末端特異的なアンカー分子の導入とAu(111)基板や金ナノ粒子表面での自己組織化による分子鎖ベクトル制御技術、および新規開発の非水系酵素触媒反応技術を組み合わせて、ユニークなナノ構造と界面・生体機能を持つ種々の多糖分子ナノアーキテクチャーを設計した。 1.平行鎖セロオリゴ糖ナノ構造体 セロヘキサオースのS誘導体をQCM分析に供したところ、金チップ表面に0.79chains/nm^2の濃厚密度で薄膜が形成された。また、本来酸化的なNMMO系セルロース溶剤を用いて、金イオンから粒径20nmの金ナノ粒子の合成に成功した。これらにより、金ナノ粒子表面にセロオリゴ糖が平行鎖で集密化したナノ粒子を新規に調製し、XRD解析によりセルロースI型結晶の存在が確認された。 2.熱応答性メチルセルロース薄膜 メチルセルロースのチオセミカルバジド誘導体を金基板上に造膜して、その界面のぬれ性を検討したところ、もとのLCSTに近い70℃付近で急激に撥水性が増大する現象を見出した。この外部温度依存的で可逆的なぬれ性変化は、溶液の塩濃度が高くなるにつれて転移温度が低下した。さらに、この多糖系薄膜をラット肝細胞の培養基材として用いたところ、非常に良好な細胞増殖性と接着性を示した。 3.ガラクトース修飾バイオインターフェース 非水系酵素触媒反応を利用して、セルロース表面に生体機能糖のガラクトース(Gal)残基を含むラクトースの導入を試みた。ろ紙(セルロースI型)と再生セルロースフィルム(II型)の双方に結晶構造を維持したままでGal修飾を施し、Gal認識部位を持つラット肝細胞の良好な細胞増殖性を確認した。 以上より、多糖分子のナノ構造制御による新規ナノ・バイオ機能材料の創出に成功した。また、多糖一分子観察など派生研究とあわせて、多糖分子構造膜のナノアーキテクトニクスの研究基盤を築いた。
|