研究概要 |
突発的洪水を再現するための水理学的モデルを構築するため,まず,有限体積法を用いた2次元地表流モデルを完成させ,半乾燥地における溜池集水域の流出解析に適用し,国際会議において成果発表を行った.このモデルに対する検証データを得るため,研究室附属の総合農業水利研究実験場(舞鶴市)を中心に,実験設備の拡充を行い,水理実験を行った.また,1次元や2次元の開水路流れにおける分散係数を,観測された実験データから同定するための数理手法を導出した.一方,より実証的なデータを得るため,ガーナ国へ2回渡航して調査研究を行った.第1回の渡航(8/28-9/8)においては,ロガー組込型の雨量計と土壌水分計を,同国の沿岸サバンナ地帯に属する大アクラ州および東部州,熱帯雨林地帯に属するボルタ州,ギニアサバンナ地帯に属する北部州に設置して,観測を開始した.また,バーティソル土壌における畝間灌漑時の土壌水分データを取得し,これに基づいて飽和-不飽和地下浸透流モデルの改良を行った.第2回の渡航(2/3-2/18)においては,ロガーデータの回収を行うとともに,地表流モデルの検証データを得るため,灌漑用水の放流試験を実施した.さらに,ギニアサバンナにおける灌漑施設として,ボンタンガ灌漑ダムおよびグン風力揚水場の視察を行った.また,現地計測データの送受信に有用なインターネット衛星接続システムの導入に関し,機器の試験と現地研究者との協議を行った.取得したデータのうち,雨量データに関しては,統計学的手法を用いつつ分布型データに変換して解析を行い,公表の準備中である.この結果はさらに,流出モデルにおける入力データとしても利用する予定である.また,土壌水分の長期データより,不飽和土壌に対する簡易モデルにおけるモデルパラメータの同定を行った.
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