研究概要 |
本研究は、泌乳前期の採食、栄養素分配、エネルギー代謝、泌乳の制御におけるグレリンの役割を明らかにすることを目的としている。今年度は、まず泌乳前期のザーネン種ヤギにグレリンを連続投与する実験を行った。供試ヤギを動物用代謝実験施設にて飼養した。飼料は粗砕アルファルファ・ヘイキューブを飽食させた。搾乳は毎朝1回行い、その直後に残飼と体重を測定した。両側の頸静脈にカテーテルを装着し、投薬と採血に用いた。分娩後6日目から11日間、グレリンあるいは生理食塩水(対照区)を頸静脈カテーテルから1日6時間一定速度(グレリン区:0.15μg/kg/min,0.1ml/min)で注入した。試薬投与の前と後にHyperinsulinemic euglycemic clamp(クランプ)実験を行い、グルコース注入速度(GIR)をインスリン抵抗性の指標とした。インスリンの注入量は0.5mU/Kg/minとした。投薬期間の後半5日間には全糞・全尿採取による消化試験を、後半3日間には呼吸試験チャンバーを用いて呼吸試験を行った。投薬開始前の乳量にはグレリン区と対照区に差はなかった。しかしながら、グレリン区では投与開始後に泌乳量の増加が認められ、対照区に比べて多い傾向にあった。体重は、対照区では経時的に低下したが、グレリン区では注入開始後から低下が抑制され、その後は一定のレベルを維持した。クランプ実験により得られたインスリン抵抗性に関するデータと、呼吸試験と消化試験の結果から得られたエネルギーバランスの変化について引き続き解析を行っている。また、泌乳前期(分娩後40日前後)のホルスタイン種泌乳牛を用いて、インスリン抵抗性に及ぼすグレリン投与の影響を検討する実験を継続している。
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