研究概要 |
本年度は,ギセリン遺伝子改変動物の作製と解析により個体レベルでのギセリンの役割解明に焦点を当てた。さらに,ギセリンの発現調節機構の解明と腫瘍における発現意義・応用性を追及した。研究実績を以下の1)〜3)に示す。 1)癌治療におけるギセリンの応用化(抗体療法とミサイル療法):マウスやラットを用いた腫瘍移植実験において抗ギセリン抗体を投与した結果,腫瘍の転移抑制効果が認められた。特に乳癌細胞の肺への転移率が有意に抑制された。また,ギセリン蛋白にFITCを標識し担腫瘍動物に投与した結果,腫瘍細胞の細胞膜に選択的に分布していた。このことより,ギセリンの同種分子間結合能はドラッグデリバリーシステムに応用可能であることが示唆され,ギセリンを標的とすることは新規の腫瘍治療薬なる可能性が期待された。 2)ギセリン遺伝子改変マウスの解析:ギセリンを過剰発現させたトランスジェニックマウスは,乳癌発生率が野生型マウスと比べ1.6倍高いことが判明した。つまりギセリンの過剰発現は癌化を誘発することが示唆された。しかしながら,このトランスジェニックマウスの発生や行動に異常は認められなかった。 3)血液中ギセリンの腫瘍マーカーとしての応用化:担腫瘍動物の血中ギセリンレベルをELISAにより定量化した結果,腫瘍(特に犬の乳腺癌)の悪性度・進行度(浸潤転移)と血液レベルに相関性が認められた。これにより,ギセリンが新規の血清腫瘍マーカーとなる可能性が示唆された。
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