医薬品やその研究開発に必要な有用生物活性化合物を、大量にしかも地球環境に負荷をかけることなく実用的に供給する方法を開発することを目的とし、「単一不斉触媒による連続不斉中心構築法」の開発および「有用生物活性化合物の効率的合成」への展開の検討を行った。 (1)我々は先に、分子内に二つの反応点を有する不斉相間移動触媒TaDiASの開発と、触媒的不斉アルキル化反応、Michael反応、Mannich型反応への応用を報告している。今回、触媒のコンフォメーション解析および反応機構解析を基に不斉相間移動触媒のさらなる最適化を行い、Michael反応におけるエナンチオ選択性を大幅に向上させることに成功した。また、本触媒的不斉Michael反応の後にMg塩存在下酸処理を行うことによって多段階の環化反応を高い立体選択性で進行させることに成功した。本連続反応の実現により、これまで10工程以上を必要としたCylindricine Cの合成を、約半分の工程で不斉合成することが可能となった。更に、環化反応の条件を変更することで異なるジアステレオマーを選択的に合成できることを見いだし、Lepadiformineの短工程形式不斉合成にも成功した。この最適化した不斉相間移動触媒はMannich型反応にも有効であることが分かり、抗精神病薬Nemonaprideの効率的不斉合成法の開発にも成功した。(投稿準備中) (2)トリフルオロ酢酸架橋亜鉛四核クラスターを創成し、この亜鉛クラスターを触媒として用いることで、エステルからの直接的オキサゾリン合成に初めて成功した。本触媒反応はエステルのアミド化反応、続く分子内環化脱水反応共に亜鉛四核クラスターが必須であり、二つの金属が同時に二つの基質を位置固定および活性化する金属酵素類似の協奏的反応機構で反応が進行していると考えている。本金属クラスターの他の有用触媒反応への応用を現在検討中である。
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