DEあるいはDEPの健康影響評価は多環芳香族炭化水素類を始めとするSOFと呼ばれる可溶性有機物に焦点があてられて研究が行われてきた。しかし、粒子自身が生殖系あるいは内分泌系に影響を及ぼすか否か、現在まで検討されていない。そこで本研究では、粒子状物質そのものであるカーボンナノ粒子(CB、平均粒径14nm)を雄性マウスに気管内投与し、雄性生殖系への影響の有無を精巣病理組織像解析及び精子性状解析を行い検討した。 5週齢の雄性ICR系マウスを用いた。CBは0.05%Tween含有生理食塩水で懸濁し(1mg/ml)、マウス1匹につき100μlを一週間に一度、10回気管内投与し、0.05%Tween含有生理食塩水を100μl気管内投与したものを対照群とした。最終投与の翌日、体重測定後、精巣及び精巣上体を摘出し、精巣及び精巣上体重量の測定後、摘出した精巣をブアン固定し、HE染色後光学顕微鏡下で病理組織を観察した。血清中テストステロン(血清T)濃度はELISA法にて測定した。 CB投与による雄性生殖系への影響を、精巣組織像の観察で行ったところ、精細管基底膜からの精上皮の離脱割合有意に増加した。また、血清中T濃度を測定した結果、有意な上昇が認められた。精巣組織像の変性及び血清T濃度の上昇が認められたことから、粒子状物質そのものであるCBは雄性生殖系へ影響を及ぼすことが示唆された。現在、精巣で発現するmRNAを精巣特異的DNAマイクロアレイにて解析を行っており、雄性生殖系への影響メカニズムを解析中である。
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