昨年度、雄性成獣マウスにカーボンナノ粒子(CB、平均粒径14nm)を気管内投与したところ、精巣組織像の変性、血中テストステロン濃度の上昇、精巣一日精子産生能の低下など、種々の雄性生殖機能に対する影響を明らかにした。しかし、ナノ粒子投与による雄性生殖機能への影響が次世代に及ぶか否か、現在まで検討されていない。そこで本研究では、14nmのCBを妊娠マウスに投与し、雄性出生仔の生殖系への影響の有無を精巣病理組織像解析及び精子性状解析を行い検討した。 プラグ確認ICR系マウス(妊娠マウス)を用いた。CBは0.05%Tween含有生理食塩水で懸濁し(2mg/ml)、マウス1匹につき100μlを妊娠7日、14日目にそれぞれ気管内投与し、0.05%Tween含有生理食塩水を100μl気管内投与したものを対照群とした。出生仔が12日齢の時点で産仔調整した。5、10、15週齢の雄性出生仔を体重測定後、精巣及び精巣上体を摘出し、精巣及び精巣上体重量の測定後、摘出した精巣をブアン固定し、HE染色後光学顕微鏡下で病理組織を観察した。血清中テストステロン(血清T)濃度はELISA法にて測定した。また、精巣一日精子産生能(DSP)の測定も行った。 精巣組織像の観察を行ったところ、全ての週齢において精細管の空胞化、精上皮の接着性の低下が認められた。血清中T値は全ての週齢において有意な変動は認められなかった。一方、DSPの解析を行ったところ、全ての週齢の雄性出生仔においてDSPの低下が認められた。以上のことから、胎仔期ナノ粒子暴露は雄性出生仔の生殖機能に影響を与えることが示唆された。
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