蛋白質の細胞内局在の変動を、健常時と病態時において比較評価し、疾患関連蛋白質を探索しようとするオルガネラ(細胞小器官)プロテオミクスが、現在、加速度的に進展しつつある。そのため、今後、細胞内の特定オルガネラに局在する蛋白質を有効な医薬品として開発しようとする試みが益々期待されるものと考えられる。ところが、生理活性蛋白質などの生体内高分子物質は、細胞外から細胞内への膜透過性が極端に悪く、そのままの状態で投与しても、細胞内に導入することが出来ないため、効果の発現は期待できない。従って細胞内の特定オルガネラに導入されて、初めて機能発現できる「転写因子やシャペロン蛋白質」などを薬物として使用した場合は、薬効を殆ど期待できないのが現状である。従って、このような蛋白質を有効な医薬品として開発するために必須の最重要基本戦略は、これら蛋白質を効率よく細胞膜から細胞内へ移行させ、標的オルガネラへデリバリーすることにある。以上の観点から本年度は、蛋白質等の薬物を、細胞外から細胞内へ効率よく導入可能なペプチド性キャリアを開発していくための基盤情報を得るために、既存のPTDに関して、蛋白質等の細胞内導入効率やその特性を評価し、興味深い知見を得た。また蛋白質等の薬物を、細胞外から細胞内へ効率よく導入可能なペプチド性キャリアを網羅的に探索可能とするため、ファージペプチドライブラリを作製し、細胞外から細胞内へ効率よく移行する多くのペプチド候補を得た。今後は、これらペプチド候補の機能評価や有用性、安全性評価等を進めていく予定である。
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