我々は神経細胞におけるREP-Jの機能を解析するため、RBP-J-floxed miceを神経細胞特異的にCreを発現するCaMKII-Cre transgenic miceとかけあわせることによって神経細胞特異的にRBP-Jの欠損を誘導した。R26R-reportor miceを用いることによりCamKII-Cre transgenic miceにおいてCreの発現が、生後0日大脳皮質においてNestin陰性・Hu陽性の未成熟神経細胞から認められることを確認した。RBP-Jを欠損した神経細胞は大脳皮質中間帯には多く認められたが皮質板にはほとんど存在しなかった。このRBP-J欠損神経細胞の局在パターンの変化は神経細胞の移動能力の障害によっても、皮質板の神経細胞特異的な細胞死によっても引き起こされうる。そこで我々はRBP-J欠損が神経細胞局在をどのように変化させるかを検討するため胎児大脳皮質スライス培養を用いたlive imagingの実験を行った。胎生14日齢においてRBP-J floxed miceの脳室帯の神経系前駆細胞にCreとEGFPを生体内でco-electroporationすることによって、一部の神経系前駆細胞においてRBP-Jの欠損を誘導した。その後、大脳皮質を摘出しスライス培養を作成することによってlive imagingを行った。この実験によりRBP-Jを欠損した神経細胞が神経細胞への分化のタイミングに異常をきたし神経細胞への分化が加速されるだけでなく、分化した神経細胞の中間帯から皮質板への移行も障害されることがわかった。このことは、RBP-Jが神経細胞への分化のタイミングを制御するのみならず、神経細胞の成熟過程においても必須の役割を果たしていることを示している。
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