研究概要 |
<本研究の目的>COX-2阻害剤の抗腫瘍機序及びCOX-2による癌化メカニズム、並びに腫瘍悪性化におけるCOX-2の誘導機序を解明する <本年度の研究実施計画と実績報告> 1.悪性腫瘍におけるc-IAP2の発現とその機能解明に対する分子病理学的アプローチ 免疫染色を行う代表的な組織として、胃癌20例、大腸癌20例、乳癌10例、肺癌10例、前立腺癌10例をそれぞれ北海道大学病院の病理組織検体から抽出。また、抗c-IAP2抗体及び抗COX-2抗体を購入し、その免疫染色の染色条件の検討を行った。当初、実際の抽出症例での染色と評価は次年度に行う予定。 2. cAMPを介するCOX-2の発現誘導のメカニズムの解明 1)大腸癌細胞株におけるCOX-2発現誘導 ヒト大腸癌細胞株HCA-7を、種々の因子で刺激し、COX-2の発現誘導をwestern blottingにて検討した。結果、3種類のgastrointesitinal peptideのうち、VIPのみがCOX-2の発現を強力に誘導することを見出し、その機序は細胞内cAMP濃度の上昇を介することを解明した。 2) COX-2誘導のシグナル伝達機序の解明 COX-2 promoter-luciferase vectorを用いて、VIP (cAMP)刺激によるCOX-2発現誘導に関与しているシグナル伝達因子の解明を行った。その結果、cAMPによるCOX-2の誘導には、PKA, ERK, p38 MAPKが重要な役割を果たしていることが判明し、JNKの関与は認められない。またこのことは、Western blottingでも確認された。 3. FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を用いた生細胞におけるアポトーシス(細胞死)の可視化 現在、FRETによるアポトーシス細胞の観察の条件検討を行っている。NSAIDsを用いた培養細胞における観察は次年度以降に予定。
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