研究概要 |
<本研究の目的> COX-2阻害剤の抗腫瘍機序及びCOX-2による癌化メカニズム、並びに腫瘍悪性化におけるCOX-2の誘導機序を解明する。 <本年度の研究実施計画と実績報告> 1.悪性腫瘍におけるc-IAP2の発現とその機能解明に対する分子病理学的アプローチ ヒト腫瘍組織におけるc-IAP2の発現の検討:抗c-IAP2抗体(Chemicon, polyclonal Ab)を用いて免疫染色を行った結果、腸管上皮の基底側の細胞に陽性となるが、腫瘍における過剰発現は認められなかった。このことは、c-IAP2は腫瘍化よりも正常腸粘膜の恒常性維持のために重要な蛋白と考えられる。しかし、腫瘍発生の初期の段階では腫瘍化に関与している可能性もあり、さらに早期癌や前癌病変での検討が必要と思われ、現在準備中である。 2.cAMPを介するCOX-2の発現誘導と癌化のメカニズムの解明 前年度までの研究でcAMP刺激によるCOX-2発現誘導にPKA,ERK,p38 MAPKが重要な役割を果たしていることが判明したが、さらにCOX-2の有無により細胞の増殖能に顕著な差異が認められることが判明した。しかもその増殖促進作用はNSAIDsにより有意に抑制された。このことは、cAMPを介したCOX-2誘導が、癌細胞の増殖を促進していることを示している。 3.FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を用いた生細胞におけるアポトーシス(細胞死)の可視化 FRETを用いたアポトーシスの生細胞での観察は、活性化されたcaspaseのcleavage機能によりプローブが切断されることでFRET現象の消失として捉えることが可能である。現有のTime-lapse顕微鏡システムにて、T84大腸癌細胞における細胞死をリアルタイムな観察を試みているが、T84細胞はクラスターを形成しやすく、上下の重なりも強いために観察が困難であり、現在細胞を変更して再検討中である。
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