p53下流で誘導されるアポトーシスのうち、p53の誘導遺伝子であるとNoxaによって担われる二つの独立した経路を明らかにした。特にNoxaによって誘導されるアポトーシスは、これまで主体として考えられていたミトコンドリアでのイベントに先立って、カスペースとカルパインという2つの蛋白分解酵素の活性化が起こることが特徴である。カルパイン活性化後に引き起こる細胞内カルシウム濃度の上昇が特徴的であり、Pumaによって誘導されるアポトーシスの際は、アポトーシスの直前にカルシウム濃度の上昇が急激に生じるのに対し、Noxaによるアポトーシスの場合には、3時間前からカルシウム濃度の上昇が観察された。上記の結果を蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の原理を利用したセンサー分子を用いて明らかにした。 このNoxaによって誘導されるアポトーシスはE1A等の癌遺伝子存在下のみで見られる現象であり、がん治療への応用が期待される系である。 Toll様受容体(TLR)の下流で機能するアダプター分子MyD88と転写因子IRFファミリーの時空間的解析は本研究課題で継続して研究している課題であるが、今回IRF-1の機能について報告した。IRF-1はインターフェロンγに誘導される分子であるが、IRF-4、5および7と同様にMyD88に結合し、刺激に応じて核移行し、インターフェロンβ、iNOS、IL-12p35等の遺伝発現を誘導することを明らかにした。
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