ショウジョウバエを用いたマラリア原虫擬似的媒介節足動物において、マラリア原虫の発生進行過程に関与する宿主側免疫応答因子群を同定するために、申請者はショウジョウバエを用いた『異所発現トラップ法』を導入した。これはショウジョウバエ個体内で未知遺伝子を強制発現させる方法であり、強制発現の結果引き起こされる様々なショウジョウバエの表現型をもとに、機能的に遺伝子をスクリーニングすることが出来る優れた手法である。申請者はこの異所発現トラップ法を用いて、ショウジョウバエマラリア感染モデルに宿主自身の遺伝子群をランダムに強制発現させることにより、病原体であるマラリア原虫を排除しうる宿主側免疫応答遺伝子の同定を試みた。平成17年度は、特に「ショウジョウバエを用いたマラリア原虫を排除しうる宿主側免疫応答遺伝子のスクリーニング」ついて研究を推し進めた。異所発現トラップ系統ショウジョウバエを約5000系統を用い、遺伝子のランダムな強制発現を行った。これらのショウジョウバエに、齧歯類特異的マラリア原虫(Plasmodium berghei)のオーキネートを注入する。この方法により、野生型のショウジョウバエではスポロゾイトが増殖することが申請者らにより明らかとなっている。このマラリア原虫の増殖判定を、マラリア原虫特異的リボソームRNA用のプライマーを用いた定量的RT-PCRにより行い、マラリア原虫のスポロゾイトの増殖が抑制される、もしくは過増殖するショウジョウバエ異所発現トラップ系統をスクリーニングした。この結果、抑制性因子の候補としてC型レクチンタンパク質であるFurrowedを同定することに成功した。次年度以降はこのFurrowedを中心に、内在性の宿主応答メカニズムの詳細を解析する予定である。
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