原虫に対する昆虫の免疫制御因子を探索する目的で、研究代表者が世界に先駆けて立ち上げた「齧歯類マラリア原虫-ショウジョウバエ感染系」を利用し、平成17年度から異所発現トラップ法によるスクリーニングを続けてきた。その過程でFurrowedとよばれる因子の同定に成功した。このFurrowedはC型レクチンドメインを持つ膜型タンパク質であり、実際にマラリア原虫を媒介する節足動物であるハマダラカ(Anopheles gambiae)においても、同様の構造を持ったホモログ分子を同定した。このハマダラカを用いてFurrowedの精力的な機能解析を進めたところ、(1)Furrowedはハマダラカの吸血依存性に中腸特異的に発現すること、(2)Furrowedは中腸におけるマラリア原虫の増殖を抑制していること、および(3)FurrowedはそのC型レクチン領域を介してマラリア原虫を直接結合することが明らかとなった。これは、病原体媒介節足動物における中腸が病原体侵入に対する「一次障壁」として機能すること、さらにその中心を担うのは病原体を直接認識するレクチン因子であり、吸血依存性に一過性の「レクチン・バリアー」を作ることを示しており、全く新しい免疫システムの存在を世界に先駆けて発見することに至った。。次年度以降はこのFurrowedを中心に、内在性の宿主応答メカニズムの詳細を解析する予定である。
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