近年心不全の増悪因子として活性酸素による酸化ストレスが注目されている。私共はヒトの不全心筋において過酸化脂質の最終代謝産物で有害なアルデヒドである4-Hydroxy-2-nonenal(HNE)が蓄積していることを報告した。心不全患者を対象として肥大型心筋症に注目して検討した。肥大型心筋症においては左室の拡大と収縮障害に至る例があるが、その機序は不明である。過酸化脂質の代謝産物で、有害なアルデヒドである4-Hydroxy-2-nonenal(HNE)がその機序に関与しないか検討した。 HNEは肥大型心筋症の患者の心筋において増加しており、特に左室の拡大と収縮障害を伴う例(拡張相肥大型心筋症例)で著明であった。その量は左室径と相関し、左室駆出率と逆相関した。以上より肥大型心筋症から不全に至る過程において、酸化ストレスが関与していることが示唆された(Nakamura et al.J Card Fail.2005;11:117-123)。 更に拡張相肥大型心筋症では核における酸化ストレスも強くなっているのではないかと仮定して検討した。肥大型心筋症患者の生検心筋組織において、核における酸化ストレスを8-hydroxy-2'deoxyguanosine(8-OHdG)を免疫染色することによって測定した。肥大型心筋症患者の核における酸化ストレスは増加しており、左室収縮能と逆相関した(投稿準備中)。肥大型心筋症から収縮不全に進行する原因として、核における酸化ストレスが関連しており、今後核の酸化ストレスを抑制する治療法を検討していく必要がある。
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